SFC言語教育の理念

言語の学習は視野を広げる窓

言語を勉強することは、SFCにおいてキャンパス開設当初より「窓」にたとえられてきました。言語が異なれば、表現方法も思考も異なります。そこには価値観・世界観の違いが伴います。ひとつの窓から眺める星空は小さくても、窓の数が多くなればなるほど、窓が大きくなればなるほど、見える世界は広く大きく拡がっていきます。言語は、その窓と同じです。母語だけで見ていた世界は、多言語の窓から見た世界とは驚くほど異なるのです。みなさんの多くは、英語をすでに言語として学んできたと思います。学校での英語の授業科目以外にも、好きな音楽や映画を英語で見たり聞いたりした経験を持つ人は多いでしょう。でも、それでグローバルな世界が見えたと思っていませんか?これは1つの窓に過ぎません。これで天空全体を見渡すことはできません。でも、この窓を足がかりにして、別の窓を開けることができます。これが、SFCでみなさんが学ぶ言語の意味です。ヨーロッパ言語でも、アジア言語でも、新たな言語をもう一つ学ぶことで、これまで知らなかった価値観・世界観に遭遇することでしょう。この学びのプロセスが、自分がこれまで捉えてきた視野を広げることだけでなく、自分の母語、そして自分の思考自体を、相対化することにつながります。

新たな言語への挑戦こそが自分の世界を変える!

慶應義塾大学SFCでは、みなさんが学習できる言語を11言語揃えています。学部を問わず全員が必ず言語コミュニケーション科目を履修します。SFCで学生が自分の研究をおこなう上で、誰もが必要とする基礎です。ここで特筆すべきことは、この言語教育が教養という名でおこなわれる知識レベルの科目ではなく、自己を発信できる運用能力を身につけることを学習目標とした実践的科目群であり、体系化されたコースを全語種が共通して構築していることです。例えばヨーロッパ言語の場合、学部1年生で初めて学ぶ言語をインテンシブコース(週4回集中コース)で3学期間(1年半)勉強すると、2年生時には、基礎的な自己発信能力が身につきます。自己発信能力とは、自分が誰で、自分が何をおこない、何を考えているのか、母語で説明するのと同じように、学習言語でも発信できる能力を指します。だからこそ、新たな言語を勉強することで、みなさんが既に学習してきた英語と相対化しながら、英語の学び返しをおこなうこともできるでしょう。

言語習得なくして研究はできない!

そして何よりも重要なことは、自分の研究につながる言語を学習言語に選ぶことです。研究分野や活動フィールドによって、必ず必要になってくる言語があるはずです。SFCは分野横断的に自分の研究テーマを設定できるキャンパスです。自分で問題提起をおこない、解決するプロセスの中で、そのための手法が必要となります。言語習得は、そのときの大切な自分の手法になります。研究対象を間接的にではなく、直接、現地の言語で情報収集できる、現地でのインタヴュー調査ができる、研究を実行するための大切な手段です。ところが、言語習得は一朝一夕に獲得できるものではありません。だからこそ、できるだけ早い時期に履修を始めることをお勧めします。学習言語を決めることは、自分のその後の研究活動の方向性にも密接に関連してきます。好きなことが研究対象として勉強できるSFCだからこそ、そのための手法は自分で考え、関連付けて履修していくことがとても大事です。

世界に輩出する人材の育成

SFCの多言語教育は、キャンパス開設以来担ってきた言語政策が重要な意味を持ちます。特にマレー・インドネシア語やアラビア語など、重要な言語であるにもかかわらず、国内の教育機関では学習の機会がきわめて少ない言語がインテンシブコースでしっかり学べる環境は、総合大学として他に例を見ない特徴です。しかも、当然のことながら知識構築型ではなく、実践的な運用能力の習得を目指します。加えて、現在では日本語を母語としない学習者のための、学習言語としての「日本語」も他の言語と共通の体系的なコース設置をおこない、多様なレベルに柔軟に対応できる言語教育をおこなっています。既習言語の英語については、言語コミュニケーション科目のみならず、一般科目でも一部は英語で開講されています(注1)ので、複数の言語を並行して学べる充実した学習環境が用意されています。(注1:英語以外の言語で開講されている一般科目もあります。)SFCの言語教育は、世界中で活躍する多様な分野のリーダー輩出につながっています。これは、言語教育が多様な研究分野と結びついた形で習得されることを意味するだけでなく、SFCにおいて積み重ねてきた多言語教育が人材育成の場として機能していることを示すものです。新入生のみなさんには、ぜひこの素晴らしい学習環境を存分に活かした学習計画を立てることをお勧めします。
みなさんの学ぶ言語の選択が、これから取り組む自分の研究の強力な手段となるように、そしてみなさんの「窓」が広く大きく開くように、いっしょに邁進していきましょう!