フランス語

フランス語



はじめに

劇作家モリエール、18世紀啓蒙思想のルソーやヴォルテール、19世紀の作家スタンダール、政治思想家トックヴィル、20世紀の小説家プルースト、哲学者サルトル、人類学者レヴィ=ストロース...。彼らによって鍛えられ、磨き上げられてきたフランス語は、精緻な文法体系を骨組みにしていながら鈍重さを感じさせない、明澄で、エレガントで、しかも民衆文化的な野趣にも富んでいる言語です。
フランス語はまた、国連をはじめとする多くの国際機関において英語に並ぶ公用語であり、英語に次ぐ作業言語です。そして、欧州連合(EU、加盟27ヶ国)の域内はもちろん、カナダ、レバノン、北アフリカのアルジェリア、モロッコ、チュニジア、中央アフリカのカメルーン、セネガル、コートジボワール等々へのパスポートの一つです。フランス語圏の諸国はフランコフォニー国際機関(OIF)という政治的・文化的ネットワークを営んでおり、その正式加盟国は54ヶ国にのぼります。世界の4分の1以上の国々が参加しているのです。フランス語を学べば、フランス的な知性および価値観を発見するとともに、世界を見る「もう一つの視座」を得ることができます。これは日本人にとって、対米関係という、なるほど重要不可欠ではあるけれども、ときに窮屈で疎外的ですらある枠組みを相対化し、かつ、東アジアというこれまた重要ではあるけれども限定されている地域をも超えて広く多様な世界の現実を立体的に捉えることにつながるのです。

ただし、フランス語は「楽勝」科目ではありません。一年やそこらで手っ取り早く習得できる言語ではないのです。生半可な覚悟では上達できません。しかし、本気で粘り強く学び続けるなら、習得の喜びと見返りは絶大です。SFCフランス語研究室は、速習インテンシブの授業を1、2、3、4の4段階まで用意し、SFC生のうちでも特に向学心の強い学生諸君の意欲に応える態勢を整えています。4名の専任教員と、トップレベルの非常勤講師陣が一体となって、本格的なフランス語教育を提供します。

フランス語研究室の大学院生からのメッセージ(2022年度春学期)

私がフランス語履修を選択した当初の動機は、「先生たちが面白そう」というような些細なものでした。その後4年間学びながら、語学研修やフィールドワークなど、実際にフランスに赴く機会を何度か得ました。大学院に進んでからも、積極的に現地調査を行いました。そうした実践体験や人的交流を経て、初めは抽象的で漠然としていたフランスやフランス語圏の人や文化に対する認識も少しずつ具体的になり、問題意識も同時に深化していきました。SFCのフランス語プログラムには、現地に思い切って飛び込んでみるチャンスが豊富に用意されています。多文化共生の在り方が一層問われていくような潮流が生まれている現代の世界の中で、その当事国としてフォーカスされることも多いフランス語圏の国々に身を投じて学ぶことは、きっと研究活動の糧となることでしょう。

藤谷 悠(政策・メディア研究科博士課程)

フランス語研究室SAの声(2022年度春学期)

私は高校生のときに第2外国語としてフランス語を習い始め、折角なら大学でも続けてみようという気持ちから毎学期履修し、SAも務めています。大学1年生の春にインテンシブを履修した時からフランス語という言語自体やフランス語圏の文化だけでなく、その文化を経験された教員の方々の個性あふれる授業風景に惹かれていました。そういった方々とこれからも関わりたい!もっと話してみたい!と思ったというのが、フランス語研究室に入ろうと思った大きな理由でもあります。研究室では、フランス語圏からの留学生や、「フランス語」と様々な関わり方をしてきた学生たちと交流することができ、非常に刺激的で勉強になります。言語を通して新しい世界を見てみたい方、これまでの学習を更なる強みに変えたい方、面白い教員の方々と話してみたい方、大歓迎です。公式SNSでもその魅力を発信しています。ぜひ覗いてみてくださいね。

山中 玲奈(環境情報学部4年)




科目ごとの授業内容





科目名 一言でいうと... 到達目標(暫定的な目安として) 回数/週
能力・資格試験 欧州評議会設定レベル
インテンシブ1
(4単位)
《SFC フラ語》
メインコース,
初級速習第1段階
DELF A1
TCF 100-199 点
仏検3級
レベル 1
フランス語基礎レベル。日常生活での単純かつ具体的な状況を理解する。相手がゆっくり話すなら、簡単なコミュニケーションも可能。
4回/週
インテンシブ2
(4単位)
《SFC フラ語》
メインコース,
初級速習第2段階
DELF A2
TCF 200-299 点
仏検準2級
レベル 2 (Basic User)
フランス語の初歩をマスター。身近な分野の単文を理解する。
慣れた状況でならコミュニケーションが可能。自分に関する問題を単純な手段で表現出来る。
4回/週
インテンシブ3
(4単位)
《SFC フラ語》
メインコース,
中級強化第1段階
DELF B1
TCF 300-399 点
仏検2級
レベル 3
フランス語を効果的にマスターしているが、限界がある。身近な分野の明快で標準的な表現なら理解する。旅行先で会話をこなし、自分に興味のあることを話すことが出来る。計画やアイデアに関して短く説明することも出来る。
4回/週
インテンシブ4
(4単位)
《SFC フラ語》
メインコース,
中級強化第2段階
DELF B2
TCF 400-499 点
仏検準1級
レベル 4 (Independent User)
フランス語を全般にわたって自主的に運用出来る。複雑なテキストの要点を理解すると同時に、一般的あるいは専門的な内容の会話に加わり、筋の通った意見を明確かつ詳細に述べることが出来る。
4回/週
ベーシック1
(2単位)
初級入門第1段階 仏検4級 レベル 1
フランス語基礎レベル。日常生活での単純かつ具体的な状況を理解する。相手がゆっくり話すなら、簡単なコミュニケーションも可能。
90分×2回
ベーシック2
(2単位)
初級入門第2段階 DELF A1
TCF 100-199 点
仏検3級
レベル 1
フランス語基礎レベル。日常生活での単純かつ具体的な状況を理解する。相手がゆっくり話すなら、簡単なコミュニケーションも可能。
90分×2回
スキル
(2単位)
上級のフランス語運用能力を身につけるための科目 DALF C1
TCF 500-599 点
仏検1級
レベル 5 (Proficient User)
フランス語の優れた運用能力を持つ。含みのある難解な長文テキストであっても、そのほとんどを理解し、自分の社会的な立場や仕事、学問との関わり、あるいは他の複雑なテーマについても、流暢かつ論理的に述べることが出来る。
90分×1回
海外研修
(2~4単位)
短期留学(春・夏) 学生による。 学生によって異なる。 60時間以上
  • 「DELF/DALF」:フランス文部省認定フランス語資格試験。世界175ヶ国で実施。
  • 「TCF」:フランス文部省認定フランス語テスト。英語のTOEFLのようなポイント制、証書は2年間有効。全世界で随時実施。慶應SFCは公式のTCF試験センターの一つ。フランス語研究室で年2回実施。
  • 「仏検」:実用フランス語技能検定試験(財団法人フランス語教育振興協会主催)
  • 「海外研修」:履修登録及び申込書記入(ブリーフィング)の案内をフランス語セクションのウェブサイトで告知。


授業風景



1. インテンシブ1、2、3、4

 インテンシブでは週に4コマの授業があります。インテンシブの1から4までを修めれば、約2年で中級のフランス語能力を身に付けることができます。それぞれ個性豊かな4名の教員が担当して一つのチーム(=クラス)を作り、担当教員たちが連携しながら履修者であるみなさんの学習のニーズや実力に合わせて、既存の教科書ではなく文化・文法・実践の観点から授業ごとに教材を用意します。インテンシブ1では自分と自分の身の回り・関心等について現在形を使ってコミュニケーションができることを目指します。インテンシブ2では過去形を習得し、自分以外の事柄を現在形と過去形を用いて叙述できるようになることを目指します。インテンシブ3と4では、自律した学習者になることを目指し、さらにフランス語のより自由な使い手になるための学習を進めます。いずれのクラスでも、単位を取得できれば次学期に一つ上のレベルに進めます。インテンシブ4の単位を取得すれば、次学期にスキル科目を履修することができます。履修資格試験(毎学期、授業開始に先立って実施)に合格すれば飛び級もできます。 

2. ベーシック1、2

 週2回の90分授業で初級フランス語を学びます。ベーシック2の単位を取得すれば、直後の学期にはインテンシブ2を履修することができます。

私の研究とフランス語

ヨーロッパを中心に発展している複言語主義に興味を持ち、現在日本の高校における第二外国語教育について研究しています。私自身、フランス語や朝鮮語などいくつかの第二外国語を勉強したことで新しい価値観や考え方に触れることができ、結果として自分自身の視野が広がったと感じています。フランスを始めとするヨーロッパの多くの国では中学生頃から必修または選択科目として第二外国語の授業が開講されています。日本ではまだ第二外国語科目がある学校はあまり多くありませんが、日本においての第二外国語教育がこれからより盛んになり、学生たちが新しい言語や文化を知る機会がさらに増えたらいいなと思っています。

秋山 ゆい(総合政策学部4年)

在学中はフランスの思想家をたよりに現代社会の問題を考えていました。フランス流の「社会」や「他者」への理論的な考察は、「今、ここ」を生きる我々を鋭く相対化する視座を与えてくれたように思います。卒業した今でも、フランス語はある時には「気晴らし」として、またある時には自分自身を映す鏡として私の中に根づいています。昨年度は「日本の学生が選ぶゴンクール賞」という企画に参加するなど、フランス語との関係はこれからも続きそうです。

佐藤 立摩(SFC研究所上席研究員[2022年度現在]、政策・メディア研究科修士課程 2020年度修了)

パリ・ナンテール大学大学院の社会心理学科(Université Paris Nanterre, Mention : Psychologie sociale, du travail et des organisations)にて、マーケティングを心理学的観点から学んでいます。個人的には、性的少数者が表現として使われているある同様の広告に対しての、日仏両国民の消費意欲や評価の違いを研究しています。こうした社会的少数者を考慮に入れたマーケティング戦略を、インクルーシブマーケティングと呼びます。日本人という人種的マイノリティーとしてフランスで暮らす中で、このマーケティング手法をより深く実感することができ、またその実感は私の研究に大きく寄与しています。SFCで学んだフランス語は、こうした私の研究に直結しているのは勿論、人生により豊かな視点や経験を与えてくれてもいるのです。

村瀬 友哉(総合政策学部2018年度卒業、パリ・ナンテール大学修士2年)

高校時代に複言語学習をした人が、その学習経験をいかに意味づけているのかについて研究しています。具体的には、日本の高校でフランス語などさまざまな言語を学んだことのある高校生や大学生、社会人を対象に、アンケート調査やインタビュー調査を行うことで、複言語学習の経験と学習経験者の異文化観や人生観とのかかわりについて明らかにしようとしています。

松木 瑶子(政策・メディア研究科博士課程)

インテンシブ・スキル履修者の声(2022年度春学期)

フランス語はヨーロッパだけでなく、アフリカでも公用語として使われていることに魅力を感じ、フランス語を学び始めました。私は高校で一年間だけ第二外国語でフランス語を履修していたのですが、高校のときは授業数も少なく、少ししか身につけることが出来なかったので、SFCでリベンジしようと思い、履修しました。 最初は、時間割に合わなかったので、週に二時間授業があるベーシック1・2からはじめ、その後インテンシブ2・3を履修しました。個人のレベルに合わせて始められることや、ベーシック・インテンシブなどいくつかのコースがあり、時間割に合わせやすいのも、SFCのフランス語の魅力だと思います。 また、フランス語の授業ではコミュニケーションを重点的に行うため、他の履修者、先生と楽しく会話をしながらフランス語を学ぶ事ができます。教えてくださる教授陣も面白い先生方が多く、これもフランス語を好きになるポイントの一つです。フランス語を学ぶことで、他のヨーロッパ言語を学ぶときに知識が生かされたり、これまで学んできた英語との差異に気がついたりすることもできます。 フランス語を学びながら、フランス語圏の文化も一緒に学べるので、大学で始める言語としてもおすすめです。ぜひ、大学に入っての第二外国語として、一緒にフランス語を学んでみませんか?

外間 愛望(総合政策学部4年)

4. スキル





テーマ 目的・趣旨
文法 インテンシブ4迄に学んだ文法事項の確認と、新しい項目の学習。フランス語運用能力をあげるための土台を築く。
口語翻訳表現演習 通訳の能力(フランス語→日本語)を養成するための練習を通じて、フランス語の力を総合的に高めることが目的。
原典講読 フランス語の正確な読解力の向上を第一の目的に据えて、実際にフランスで出版されている本を読む。
Lire, reformuler et discuter フランスやフランス語圏の時事問題や文化についての教材を用いて、読解や要約、言い換え、議論の力を養う。
フランス語と市民性 グローバル化する社会で求められる言語スキルを、異文化対応能力の観点から高めるトレーニング。
専門表現のフランス語 時事問題を中心に、毎週違うテーマを選んでディベートの練習をする。また、自らの研究テーマをフランス語で、アカデミックにプレゼンテーションするためのトレーニングを行なう。
TCF対策 フランス語の国際的な資格試験であるTCF(Test de connaissance du français)や種々の面接・面談などに臨むときに必要となる口頭でのコミュニケーション・スキルを身に付ける。
フランス語スキル(フランス語でプロジェクト) プロジェクト学習を通して言語的・文化的スキルを向上させる。実際の状況や社会的問題に基づいたプロジェクトを、他の学生とともに組み立てる。

5. 海外研修

フランス語の海外研修は毎年春と夏の長期休暇中におこないます。研修に参加して一定の条件を満たした者は、次の学期に履修申告することにより2単位~4単位を取得できます。

「海外研修」体験者からのメッセージ(2022年度春学期)
フランスって、おしゃれで素敵だけど遠い場所。私はこのような漠然としたイメージしか持っていませんでした。しかし、SFCでフランス語を学び始め、先生方から授業を通して様々なことを教えていただき、リアルなフランスを知りたいと思うようになり海外研修制度を利用しました。いざ、フランスに行ってみるとホームステイ先がおばあちゃん一人だったこともあり、一軒家に二人暮らし。初日はお互いの意思疎通がうまくとれず苦労しましたが、だからこそフランスの生活スタイルや文化、人を身を以て体験、知ることができたと思います。また、私が通ったAlliance Française de Rouenはルーアンの旧市街に位置していました。新しい文化と古くからの文化が入り混じり、まちから学ぶことも多かったです。一人での海外が初めてだったため、最初はかなり不安でしたが、大変貴重な経験ができたと思います。この研修では、言語力だけでなく、旅行などでは知ることができないリアルなフランスの生活も学ぶことができます。ぜひ、皆さんも海外研修制度を利用し、チャレンジしてみてください。きっと異国の地、フランスだからこそ得ることのできる学びがたくさんあると思います。

渋谷 真紗子(環境情報学部2021年度卒業、2019年海外研修参加)

僕が夏に滞在したブザンソンはフランス東部の街です。川に囲まれた美しい小さな街には、歴史的な建造物が並び、長い歴史を感じさせる文化が息づいています。特に指揮者コンクールは有名です。ホストファミリーのおかげで、音楽を楽しむ機会、車で街の外に出る機会があったことは幸運でした。少し街を出ると田園風景が広がっています。静かに時間が流れるブザンソンはフランス語の習得に取り組むには最適でした。学校は言語を教えるための専門機関だったこともあり、授業は少し大変でも本当にためになったと思います。勉強と異文化体験に充実した1ヶ月を送ることができる海外研修は、皆さんの記憶に残る素晴らしいものになると思います。ぜひ参加してください。

原田 裕也(環境情報学部4年)





授業体系図





教員スタッフ

専任教員





氏名 専門
國枝 孝弘
KUNIEDA, Takahiro
フランス文学、フランス語教育
宮代 康丈
MIYASHIRO, Yasutake
政治哲学、フランス哲学・思想
西川 葉澄
NISHIKAWA, Hasumi
フランス文学、フランス語教育
アキル・シェッダーディ
Aqil Cheddadi
建築学、フランス語教育

非常勤教員

塾外から、日本でもトップレベルの先生方に出講していただいています(リストは2022年度秋学期現在)。

GAILLARD Nicolas

倉舘 健一

CORBEIL Steve

澁谷 与文

SILVA Sonia

DURRENBERGER Vincent

常盤 僚子

DEMAZY Sacha

中尾 和美

野崎 夏生

MARECHAL Béatrice

山根 祐佳

余語 毅憲